リアルとネットで販路を拡大し続ける老舗の銘菓
小島屋の「けし餅」は、江戸時代から続く、大阪・堺市を代表する銘菓だ。創業以来300年以上、伝統の製法を守りながら、販路を拡大し、その人気と知名度は全国に広がっている。桑原武夫社長、顧問税理士の忠岡博氏に、販売戦略について聞いた。
堺名産として愛される「けし餅」
――「けし餅」が長く愛されている理由は何でしょう。
桑原 一番の理由は昔ながらの味でしょう。「けし餅」は、江戸時代の初期に、南蛮貿易でけしの実が堺に持ち込まれたのを機に生まれたと聞いています。製法も原材料も変えず、「けし餅」一筋に作り続け、堺の名産として認識されるようになりました。「これを食べると、何十年も帰っていない堺の町並みを思い出す」と言われる方もいます。代々受け継いできた味を守り、昔を懐かしんでもらえる存在でありたい。それが弊社のポリシーです。
――こだわりを教えてください。
桑原 餡・餅・けしの実のバランスを大切にしています。自慢は、餅に合うなめらかでサラッとした口当たりの自家製餡。ほどよい甘さの餡と、けしの実のぷちぷちした食感が「けし餅」の大きな特徴です。添加物は一切使っていません。
その分、できたてをお届けできるよう、毎朝4時から職人たちが作っています。1日1万個を製造するようになった今も
昔と変わらぬ手作りにこだわっています。
――販路を増やされていますね。
桑原 より多くの人に「けし餅」の美味しさを知っていただくため、私の代で一挙に広げました。まず進めたのは髙島屋、阪急をはじめとした百貨店への出店です。さらに、お土産に買われることが多くなり、手に取っていただきやすい場所を考え、主要駅や空港の売店へ置きました。今では「エキマルシェ新大阪」の人気商品のひとつになり、売上も伸びています。
――「けし餅」を使ったロールケーキもユニークです。
桑原 中心購買層ではない若い方にアピールする目的で2年前に考案しました。餡を包んだ餅を、生クリームたっぷりのロールケーキで巻き、外側にけしの実がまぶしてあります。他にはない和洋折衷の珍しいお菓子ということで徐々に人気を集め、月に500本売れるヒット商品になりました。「けし餅ロール」によって購買層を広げ、最終的に「けし餅」に興味を持っていただくことを目指しています。
ネット上の販路を急拡大
――BESTホームページを導入された理由を教えてください。
桑原 ホームページ(以下HP)は店舗に来られないお客さまのための店舗です。以前は自作のHPでしたが、より見栄えが良いものにするため、制作を依頼しました。HP上で商品を販売できる点も導入を決めた理由です。クレジット決済機能付きで、ワンクリックで購入いただけるようになりました。
――販売効果はいかがでしょう。
桑原 月に1万を超えるアクセスがあり、売上も堅調です。毎日5~10件の注文が必ず入ります。現在はインターネット上での販路も拡大しようと、楽天市場に続きヤフーショッピングへの出店も計画中です。ただし、利益率が最も高い自社HPでの売上を伸ばすことに、より力を入れています。
――HPのコンテンツで工夫した点は?
桑原 同業他社のHPと大きく異なる点は、単にお菓子を紹介するのではなく、堺という地域の情報を発信している点です。仁徳天皇陵や千利休の屋敷跡といった名所、チンチン電車を紹介しています。販売目的だけのHPは見ても面白くない。フェイスブックも同様に、地元の祭りや季節の移り変わりの様子、見所を発信していますが、だからこそ多くの人に見てもらえる。まずは堺の魅力を伝えて、そこに根付いているお菓子だと認識してもらえればという考えです。
――今後の方針をお聞かせください。
桑原 大阪府内の販路はほぼ開拓しつくしました。これからより重要になってくるのは
ネット販売です。昔と違い、待っていればお客さまが来てくれる時代ではなくなりました。
LINEを使ったマーケティング、小島屋独自のアプリなど、常に時代を先取りした取り組みを行っていきたいと考えています。
――中小企業のHP活用についてどのようにお考えですか。
忠岡 HPのリニューアルを機に、ここまでネット販売を伸ばされたことに感心しています。桑原社長の場合、当初からどういうデザインにしたいかなど、HPの明確なイメージを持たれていました。それが成功につながった要因だと思います。重要なのは、どのようなHPを作って、事業をどう展開するのか具体的な構想をきっちりと描くこと。それがビジネスを成功させる鍵と言えるでしょう。
この度は取材にご協力いただきまして、ありがとうございました。
株式会社 小島屋
〒590-0955 大阪府堺市堺区宿院町東1-1-23
電話番号:072-232-0313
HP http://keshimochi.com/
(インタビュー・構成/アイ・モバイル 株式会社)
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