地域社会と深く共鳴する 認定こども園の“ 誠実”
兵庫県姫路市にある「のぎ保育園」は1970年5月に認可外保育園としてスタートし、地域の子供を受け入れてきた。50年近く〝認可外〟のまま運営されてきたが、2017年4月、認定こども園に。野喜久子園長に〝認定〟への移行を実践した背景、保育方針、ホームページ(HP)の活用について話を聞いた。
──保育園設立の経緯は?
野喜 創立者である祖母は、もともと公立の幼稚園に勤めていました。当時は、公立の幼稚園・保育所、社会福祉法人の認可保育所、私立の認可外保育園があったのですが、子どもの増加に対応し切れていませんでした。そこで祖母は〝誰でも入れる保育園を作りたい〟と考え、この土地にプレハブを建て、7、8名の園児をお預かりしたのがスタートです。一方、私は大学を卒業してから4年間認可保育所に勤めていましたが、1984年から当園に保育士として勤務し、その後、園長となりました。
──なぜ認可を受けなかったのですか。
野喜 認可を受ければ、経営上安定することは分かっていました。ただ入園児童を選別したくなかったのです。親御さんが私のところに電話をかけたり相談に来る理由は、たいていは「困ったから」なんですね。そういう方を受け入れたいと思っていました。
──認可を受けることを決められたのはなぜですか。
野喜 大きな要因は、職員のことを考えたからです。「認定こども園」という新しい制度ができ、保育園のあり方も変わりました。職員は、当園が苦労した時期を知っているし、これからもここで働きたいという思いもあります。一生懸命やってくれている職員の生活を考えなくてはいけない。切り替える時期かなと思いました。
地域との信頼関係構築
──地域社会との関わりを大切にされているとうかがいました。
野喜 当園は、京見山の麓にあり、団地に隣接しています。町中と違い自然に恵まれ、コミュニティーもしっかりしています。50年もの間、地域社会との信頼関係を構築してきました。たとえば、敬老会の際は、参加者を園に招き、自園で調理した温かいものを園児たちと和気あいあいと食べてもらいます。園児にも地域社会との関わりを経験させることは重要です。「今日はおじいちゃん、おばあちゃんと食べたね。うれしそうだったね」などと語りかけ、園児たちが何かを感じてくれたらと思っています。
──園児にはどう接していますか。
野喜 子どもたちにはそれぞれ個性があって、集団生活になじめない子もいます。最初は、保育士の指示に対して半分以上が動けない。そこで、「分からなかった人、手を挙げてごらん」「先生もう一回言うよ」と……。すると、分からなかった子の数がさらに半分になる。それをみんなができるまで繰り返すのです。また、英語やヒップホップダンス、リトミックなど、習い事の場を提供して、子供たちの「やってみよう」という意欲や、「できる」という自信を引き出すようにしています。
── 集団生活は〝みんなが平等〟だとうかがいましたが……。
野喜 園児の中には、他の子と同じ動きができない子もいますが、われわれは平等に接しています。他の子と同じようにできたら「わぁ、すごいね」と言葉をかけます。今年の合奏の発表会でも、一人だけ幕の外でカスタネットをたたいている子がいました。その子が「ここまで来ると、お母さんが見えたんだ」と幕の外で一生懸命カスタネットをたたく姿に、担任は胸を熱くしていました。集団で何かを行う場合、みんなが参加できないといけないし、参加させてあげたいと考えています。
HPで情報を積極発信
──HP開設の目的は?
野喜 以前は、無料のHPサービスを利用していましたが、データのアップロードがうまくできないなど運用が不安定でした。そこで、認定こども園に移行する際、サイファー税理士法人の神澤佳裕先生にBESTホームページ(TKC会員の関与先企業のみ利用可能)をご紹介いただきました。保護者の方々には納得して入園いただきたいので、HPを活用して当園の情報を積極的に発信しています。最近もHP経由で「空きがありますか」「引っ越してきますが、見学はできますか」といった問い合わせがありました。
──HPの内容で工夫しているところは?
野喜 保育園が伝えたいことではなく、保護者が知りたいことを掲載するようにしています。園児の様子を伝えるブログや〝園だより〟など、プライバシーにかかわるコンテンツでは、保護者と職員だけが見られるようパスワードで閲覧制限しています。また行事で撮影した写真を、HP上で保護者自身が選んで購入できる仕組みも作りました。園に来なくても写真が購入できると好評です。
──今後、HPを活用してやりたいことは?
野喜 プライバシー保護のために閲覧制限している情報のなかで、公開できるものは順次公開していき、保育園選びの参考にしてもらいたいです。また、育児に悩んでいる人、なかなか外出できず相談相手がいない人に役立つような「相談コーナー」が作れたらとも思っています。
この度は取材にご協力いただきまして、ありがとうございました。
認定こども園 のぎ保育園
住所:兵庫県姫路市勝原区丁133-564
TEL:079-273-1613
URL:http://www.takahashigiken.co.jp/
(インタビュー・構成/アイ・モバイル 株式会社)
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