ITマーケティングNews vol.9-1
ノーベル経済学賞受賞で注目!「行動経済学」はビジネスにどう役立つ?
10月9日に発表された、2017年のノーベル経済学賞は、「行動経済学への貢献」が高く評価された、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞しました。
スウェーデン王立科学アカデミーは授賞理由について「“経済”と“人の意思決定の心理的分析”の間に架け橋を築いた」と称えています。
セイラー教授は1945年生まれ。買い物や投資、ギャンブルなど、日常生活における身近な経済行動について心理学を交えて分析する「行動経済学」の権威として知られており、一般読者に向けた著書も多数執筆されています。
(画像:シカゴ大学公式サイト)
■ 広告にも活用される「行動経済学」とは
伝統的な経済学は「人は自分の利益を最大化するために最も合理的な選択をする」という考えを前提にしていますが、現実の人間の行動はそう でないことが多いようです。このような人の非合理性を踏まえ「心理学と経済学の両面から人々の経済行動を分析してみよう!」という学問が「行動経済学」です。行動経済学は今日、企業が広告戦略を立てる際に、顧客の行動心理を推測するための理論としても大いに活用されています。
セイラー教授の研究の中で著名なものに、キャス・サンスティーン教授と共に発表した「Nudge(ナッジ)」があります。 「Nudge(ナッジ)」とは、肘で軽くつつく、という意味の言葉であり、「ナッジのようなちょっとしたきっかけを与えることで、人々の選択をより良い方向に導ける」という研究です。「ナッジ」が、広告やマーケティングにどのように活かされているのか、身近な例を見てみましょう。みなさんも、こんな経験をしたことがありませんか?
【1】飲食店で「店長おすすめ」と書かれたメニューを思わず注文した
【2】商品名から味が想像できない新しい飲み物を試飲したら、それがお気に入りの飲み物になった
【3】スーパーで、通常の野菜売り場とは別にある「地産地消」コーナーにある野菜を好んで買う
【4】オンライン会員登録時に「メールマガジン配信を受け取る」設定をそのままにした
これらは「ナッジ」によって引き起こされた行動の例です。このように実は日々の生活にたくさん組み込まれている「ナッジ」ですが、ビジネスにはどのように活用できるでしょうか。
■「デフォルト(初期設定)」
人は現状の設定や選択を変えるデメリットを、無意識下で多めに見積もりがち。(これを「現状維持バイアス」といいます)「デフォルト」は現状維持バイアスを踏まえて、ユーザーに選択肢を提示する際、あらかじめ適切な選択肢をデフォルトにして、結果的にそれを多く選ばせる手法。 ※例【4】
■「マッピング」
「経験が少なく、試しに取り組むには予算や時間などの都合から難しい」ことは、結果がイメージできないため、容易には選べない。「マッピング」とは、「自分の選択」と「その結果」の関係を分かりやすく示すことで、適切な選択を推奨する手法。 ※例【2】
■「選択肢の体系化」
選択肢が多すぎたり、複雑すぎると、色々調べたり、選ぶのに手間がかかり苦労する。「選択肢の体系化」は、利用者の負担を軽減するため、選択肢を単純化する(「店長おすすめ」といったラベルを付けるなど)ことで、適切な選択を推奨する手法。 ※例【1】【3】
■ コンテンツやサービスを効果的に伝えるには?
現代人は、TV・新聞雑誌・インターネットなど様々なメディアから、ニュースや広告を常に受信する「情報で溢れた社会」にその身を置いています。これらメディアからの情報に対して使えるお金や手間には限りがあるので、無意識下でたくさんの取捨選択をしています。無意識下の意思決定ロジックを研究した 行動経済学」は、「選ばれる」ための広告戦略の策定に大いに活用されるようになりました。 Webサイトの運営でも、運営者はユーザーに自社の魅力や独自性をできる限り効果的に発信する必要があります。「ナッジ」の手法は本稿で紹介したもの以外にも多岐にわたりますが、顧客の行動心理を推測するための理論は、PRや広告のコンテンツ強化に寄与します。行動経済学を積極的に自社のPR・販促に取り入れることは、ビジネス上大いに効果があることでしょう。
ビジネスに活用できる学問は、その多くが“なんだかよくわからないもの”を分類立てて把握できるようになると、ものごとのとらえ方が変わり、企画力が強くなるという持続性を持っています。今回取り上げた「行動経済学」を理解すると、広告を作ったマーケターの意図を想像できるようになり、別の視点から考えてみることで、ビジネスの基礎体力向上につながります。ものごとのとらえ方をどんどんアップデートしていきましょう!( ITマーケティング研究所 浅井 聖一)
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(構成 / アイ・モバイル ITマーケティング研究所)
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